セラチオペプチダーゼ(セラペプターゼ)[Serratiopeptidase, Serrapeptase]はカイコ由来の酵素です。抗炎症作用を持ち、血栓を予防する効果が示唆されていますが、研究が十分ではないため信頼性は高くありません。

概要

重要な効果・情報

セラペプターゼ(Serrapeptase)は、カイコの消化系に固有の細菌由来のタンパク質分解性酵素です。本来カイコの繭を分解している酵素です。伝統的に、セラペプターゼはその抗炎症性のために使用されてきました。武田薬品工業によって開発され日本や欧州では医薬品として使用されてきましたが、日本では1995年に再評価のための臨床試験(プラセボを対照とした二重盲検比較試験)で、有効性を証明することができず、2011年2月に製造販売が中止されています。米国では栄養補助食品に分類されています。残念ながら、セラペプターゼに関する多くの研究は、実験の構造が不十分であったり、対照群が不十分のため、十分に検証ができていません。最近のデータでは、関節炎や炎症に対してはそれほど有効ではないことが示唆されています。セラペプターゼは補給後に血中に検出されますが、標準経口用量が低く、腸から吸収される量は非常に少ないため、セラペプターゼの研究の結果の信頼性も低く、効果が見られない理由の1つかもしれません。セラペプターゼは、身体がタンパク質を分解するのを助け、粘液を液化させ、細菌のバイオフィルムを減少させる作用があることが分かっています。バクテリアが粘膜の表面や互いに付着する能力が低下させると考えられています。このような作用によって、セラペプターゼが痰の蓄積、鼻汁、のう胞性線維症の肺症状を軽減し、他の化合物が細菌と戦うのをサポートしていると考えられています。

 

適応・効果

適応情報

有効性の信頼度(中)

  • 鼻腔手術後の顔面腫脹
  • 慢性気管支炎 研究によると、セラペプターゼを約4週間服用すると、慢性気管支炎の人の咳と粘液分泌が有意に減少することが示唆されています。
  • 副鼻腔炎  初期の研究によると、副鼻腔炎を持つ人がセラペプターゼを服用すると、治療の3〜4日後に痛み、鼻分泌物および鼻閉塞を有意に減少させられることが示唆されています。
  • 嗄声(喉頭炎) 初期の研究は、喉頭炎を持つ人がセラペプターゼを服用すると、治療の3〜4日後に痛み、分泌、嚥下困難および発熱を有意に減少させられることが示唆されています。
  • 咽喉痛(咽頭炎) 初期の研究は、セラペプターゼを服用すると、治療の3〜4日後に痛み、分泌物、嚥下困難および発熱を有意に減少させられることが示唆されています。

エビデンス不足

効果まとめ

効果まとめ表

効果まとめ表は動物や試験管内の実験ではなく、経口服用による人体での反応を科学的に研究したデータを基にどのような効果がどの程度あるのかをまとめたものです。

 

レベル 研究の質と量

?

信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります.

二重盲検臨床試験が繰り返し行われ確実性の高い研究が実施されています。
2つ以上のプラセボ効果を排除した二重盲検試験を含む複数の研究が実施されています。
二重盲検試験が1件または複数コホート試験が実施されています。
上記に満たない研究内容または観察研究のみが報告されています。
研究の質と量

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信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります.

研究対象 効果の大きさ

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それぞれの研究対象に対する効果の方向性と大きさ. 対象項目を増加させるもの、低下させるもの、作用しないものを示しています.

研究の整合性

?

科学的な研究でも常に結果が一致するとは限りません. この評価が高いほど対象項目に関する科学的な研究結果が一致しており、整合性が取れています.

摘要
炎症 小さい 高い 4件の研究結果を見る
コルチコステロイドよりも効果は低いですが、手術や外傷後の腫脹および炎症を軽減するようです。セラペプターゼに関する主張をサポートする実用的なエビデンスが欠如しており、代わりに、手術後の炎症についてのみ報告される傾向があります。
痛み 小さい 高い 5件の研究結果を見る
手術後に炎症が減少するのに付随して痛みも軽減するようです。VASスケール(1〜10段階)で1ポイントの減少が見られます。
粘液産生 中程度 非常に高い 4件の研究結果を見る
セラペプターゼの粘液溶解特性によって、粘液の粘性が顕著に低下します。弾力性もやや信頼性は低いですが、低下します。鼻内の粘液や肺痰(のう胞性線維症)の両方に有用となる可能性があります。
乳房の圧痛 小さい 研究結果を見る
セラペプターゼ(serrapeptase)治療で乳房の圧痛および痛みの減少が見られました。
むくみ 小さい 非常に高い 2件の研究結果を見る
抗炎症効果に関連して、腫脹および術後の浮腫が減少するようです。
手根管の症状 小さい 研究結果を見る
症状の減少が見られていますが、研究の構造に問題があります。再現性の検証が必要です。
表在血栓性静脈炎の症状 小さい 研究結果を見る
症状のわずかな減少があり、セラペプターゼの線維素の溶解特性に起因すると考えられるます。

 

副作用

セラペプターゼの短期(最大4週間)の経口服用は、成人にとって安全と考えられています。 長期服用の安全性については十分な情報がありません。

注意と警告:

妊娠と授乳: 妊娠と授乳に関する十分な情報がありません。安全のため使用を控えましょう。

出血性疾患: セラペプターゼは血液の凝固を妨げる可能性があるため、出血性疾患を悪化させる可能性についての懸念があります。 出血性疾患がある場合は、使用する前に、医療提供者に確認してください。

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手術: セラペプターゼは血液凝固を妨げる可能性があります。 手術中および手術後に出血を増加させる恐れがあります。 手術の少なくとも2週間前にセラペプターゼの使用を中止してください。

注意事項

相互作用?

中程度の相互作用

下記の組み合わせに注意してください。

  • 血液凝固を遅らせる薬(抗凝固剤/抗血小板薬)セラペプターゼは血液凝固を低下させる可能性があります。 セラペプターゼを併用すると、凝固が遅くなり挫傷や出血の可能性が増加する可能性があります。血液凝固が遅くなる薬剤には、アスピリン、クロピドグレル、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、ダルテパリン、エノキサパリン、ヘパリン、ワルファリンなどが含まれます。

その他の名称

  • セラチアペプチダーゼ、セラチアE-15、セリラジン、セラチアプロテアーゼ、セラチオールペプチダーゼ、シルクウォーム酵素

注意点

  • セラペプターゼ(Serrapeptase)は腸で作用するために腸溶性のカプセルが必要です。

良い組み合わせ

  • 抗生物質(細菌上のバイオフィルムを減少させ、したがって細菌に作用する抗生物質の能力を高める)

確認事項

服用方法

推奨用量、有効量、その他の詳細

セラペプターゼの標準用量は10〜60mgです。食事の30分前または食事の2時間後、1日3回空腹時に補給する必要があります。ほとんどの研究では、8時間ごとに10mgのセラペプターゼを使用しています。セラペプターゼの最適用量を決定するためには、さらに多くのヒトのエビデンスが必要です。 10mgのセラペプターゼは約20,000の酵素単位です。

科学的根拠・参考文献