D-セリンは、認知力の向上や統合失調症の治療に効果が示唆されているアミノ酸です。血液中に安定して到達することが難しいため、効果の信頼性が低くなっています。

概要

重要な効果・情報

D-セリンは脳に存在するアミノ酸です。グリシンから誘導される d-セリンは神経修飾物質で、ニューロンの活性を調節する作用を持ちます。D-セリンの補給によって認知力の低下を軽減することができます。また、コカイン依存症や統合失調症などの、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)シグナル伝達の低下を特徴とする疾患の症状を軽減する作用も示唆されています。統合失調症に対するD-セリンの効果は多くの研究が行われており、効果が示唆される一方で、経口補給後に必ずしもd-セリンが血中に到達できるとは限らないため、効果についての信頼性は低いとされており、サルコシンの方が信頼性の高い治療法である可能性が示されています。

D-セリンはNMDA受容体に対する共同作用物質であり、NMDA受容体に結合する他の化合物の効果を増強します。これらの化合物には、グルタミン酸塩やNMDA自体などがあります。D-セリンは、向知性サプリメントに分類される例があります。

適応・効果

効果まとめ

効果まとめ表

効果まとめ表は動物や試験管内の実験ではなく、経口服用による人体での反応を科学的に研究したデータを基にどのような効果がどの程度あるのかをまとめたものです。

レベル 研究の質と量

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信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります.

二重盲検臨床試験が繰り返し行われ確実性の高い研究が実施されています。
2つ以上のプラセボ効果を排除した二重盲検試験を含む複数の研究が実施されています。
二重盲検試験が1件または複数コホート試験が実施されています。
上記に満たない研究内容または観察研究のみが報告されています。
研究の質と量

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信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります.

研究対象 効果の大きさ

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それぞれの研究対象に対する効果の方向性と大きさ. 対象項目を増加させるもの、低下させるもの、作用しないものを示しています.

研究の整合性

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科学的な研究でも常に結果が一致するとは限りません. この評価が高いほど対象項目に関する科学的な研究結果が一致しており、整合性が取れています.

摘要
認知 小さい 高い 3件の研究結果を見る
統合失調症の症状を軽減することで、認知能力の改善が示唆されています。正常な人に対しても効果がある可能性はありますが、科学的研究による実証はされていません。
統合失調症の症状 小さい 中程度 6件の研究結果を見る
D-セリンサプリメントを30-120mg/kgの用量で服用すると、統合失調症の症状を軽減することが示唆されていますが、服用による血液中のD-セリンの上昇が不安定なため、研究成果の信頼性も低いとされています。
不安 小さい 研究結果を見る
試験の2時間前にD-セリン2.1gを摂取した健康な人の試験中の不安が軽減が見られました。
注意 小さい 研究結果を見る
試験前に2.1gのD-セリンを施主した健康な被験者の注意力をCPT-IPによって評価したところ、認知試験中の注意力の持続性が増加しました。
主観的福利 小さい 研究結果を見る
プラセボと比較した場合、D-セリンを補給した被験者の認知テスト中に報告する悲しみが減少しました。
パーキンソン病の症状 小さい 研究結果を見る
予備的なエビデンスによると、D-セリンの標準的な服用量でパーキンソン病のいくつかの症状を緩和することができることが示唆されています。
心的外傷後ストレス障害の症状 小さい 研究結果を見る
PTSD患者が20mg/kgのD-セリンを服用した研究では、プラセボと比較して補給の効果が認められました。
ワーキングメモリ 小さい 研究結果を見る
試験の2時間前に2.1gを補充した場合、短期記憶が軽度に増加するようです。
反応時間 研究結果を見る
2.1gのD-セリンを認知試験の2時間前に服用した場合、プラセボと比較して反応時間に有意な影響は見られませんでした。
血清BDNF 研究結果を見る
健康なヒトが2.1gのD-セリンを服用しても、血清BDNF濃度に有意な影響は見られませんでした。
言葉の流暢さ

 

研究結果を見る
言葉の流暢さの試験の2時間前に2.1gのD-セリンを服用すると流暢さに改善が見られましたが、プラセボと比較して統計的な有意には達しませんでした。

 

副作用

現在、副作用に関する情報はありません。

服用方法

推奨用量、有効量、その他の詳細

D-セリンの研究で使用される一般的な用量は体重あたり30mg/kgです。これは60kgの人の場合は1800mgに相関します。この用量が、様々な疾患における認知を改善するための最小有効用量であると考えられます。予備的なエビデンスによれば、60mg/kgや120mg/kgのように用量を増加させることで、統合失調症の患者の症状に対する効力も増加することが示唆されています。

科学的根拠・参考文献