ピラセタム(UCB6215)は、ラセタム類の化合物で海外では向知性サプリメントととして販売されており、日本では処方薬として利用されています。補給によって、ミオクローヌス、泣き入りひきつけ、記憶障害、眩暈、注意力・集中力の低下、情緒不安定、抗てんかんなど脳神経の保護・改善効果が示唆されています。

概要

重要な効果・情報

ピラセタム(Piracetam)は、認知力の増強を目的とした合成サプリメントのラセタム(racetam)の一種です。環状γ-アミノ酸(cyclicGABA)誘導体で、諸外国において記憶障害、眩暈、注意力・集中力の低下、情緒不安定などの改善や抗てんかん剤として使用されてきましたが,近年,皮質性ミオクローヌスに対する有効性が認められ日本では希少疾病用医薬品に指定され処方箋薬となっています。ピラセタムは、認知障害の治療に使用されてきた歴史があり、メタアナリシスによると、加齢に伴って生じる認知機能が低下している人が補給することで認知機能が改善することが示されています。また、寿命を延ばす作用を持つ可能性がありますが、健康な人にとっては限定的な効果しかない可能性があります。ピラセタムを健康な人が補給しても、認知機能にはほとんど効果がないようです。予備的なエビデンスによれば、健康な人がピラセタムを補給しても軽度の効果しか見られませんでしたが、高齢者が服用すると顕著な効果を持つことが示唆されています。また、ピラセタムを補給することで、子供の泣き入りひきつけが減少することが示されています。ピラセタムは、細胞膜の流動性を高めることが示されており、このようなメカニズムが特に高齢者で顕著に認知を改善できる理由ではないかと解釈されています。ピラセタムは、血液凝固の予防にもアスピリンと同等に有効であり、心血管外傷後の補助的な治療介入にも有効とされています。

適応・効果

適応情報

 有効性の信頼度(非常に高い)

  • ミオクローヌス:皮質性ミオクローヌスに対する抗てんかん剤等との併用療法が処方箋薬として認可されています。

 有効性の信頼度(高)

  • 泣き入りひきつけ:ピラセタムの服用により泣き入りひきつけに顕著な効果が示されています。

有効性の信頼度(中)

  • 記憶力:高齢者の記憶力の改善に効果が示されています。健康な成人の記憶力の改善には軽度な効果しかないようです。

エビデンス不足

  • 攻撃性気分異常:認知機能が低下した人の攻撃性や激越の軽減が示唆されました。

副作用

効果まとめ

効果まとめ表

効果まとめ表は動物や試験管内の実験ではなく、経口服用による人体での反応を科学的に研究したデータを基にどのような効果がどの程度あるのかをまとめたものです。

 

レベル 研究の質と量

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信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります.

二重盲検臨床試験が繰り返し行われ確実性の高い研究が実施されています。
2つ以上のプラセボ効果を排除した二重盲検試験を含む複数の研究が実施されています。
二重盲検試験が1件または複数コホート試験が実施されています。
上記に満たない研究内容または観察研究のみが報告されています。
研究の質と量

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信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります.

研究対象 効果の大きさ

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それぞれの研究対象に対する効果の方向性と大きさ. 対象項目を増加させるもの、低下させるもの、作用しないものを示しています.

研究の整合性

?

科学的な研究でも常に結果が一致するとは限りません. この評価が高いほど対象項目に関する科学的な研究結果が一致しており、整合性が取れています.

摘要
認知機能低下 中程度 非常に高い 6件の研究結果を見る
高用量ピラセタムを服用することで、高齢者の認知低下の速度が顕著に低下することが示されています。ピラセタムは認知低下の予防効果の比較対象の基準薬として使用されることもあります。
泣き入りひきつけ 大きい 非常に高い 3件の研究結果を見る
子供の泣き入りひきつけの減少に顕著な効果があり、副作用も見られませんでした。
攻撃性 小さい 研究結果を見る
認知機能が低下した人の攻撃性と激越症状の軽減が見られました。
記憶力 小さい 非常に高い 2件の研究結果を見る
ピラセタムによる記憶力の増加が見られました。健康な人への影響はエビデンスが限定的でそれほど顕著ではありませんでした。
卒中の回復率 研究結果を見る
卒中回復率に有意な影響は見られませんでした。
認知 研究結果を見る
健康な人の認知に有意な影響は見られませんでした。

副作用

重大な副作用

  1. 痙攣発作:1.7%(連用中における急激な減量ないし中止により)
  2. 白内障:1.7%(定期的に眼科検査:目のかすみ等の症状)→減量,休薬等処置

その他の副作用

下記のような副作用がある場合は、減量、休薬等の処置を行います。

  1. 血液(白血球減少、血小板減少)
  2. 精神神経(眠気、倦怠感、ふらつき感、易怒・粗暴性、記銘力低下、運動過剰、神経過敏、不安感、抑うつ、不眠)
  3. 消化器(下痢・軟便、嘔気・嘔吐、食欲不振、胃部不快感、腹痛、口渇、舌苔)
  4. 肝臓(肝機能異常)
  5. その他(熱感・発汗、胸部圧迫感、筋肉痛、感冒様症状、女性化乳房、血圧上昇、皮疹、Al-P増加、CK増加)

注意事項

子供:子供に対する安全性は未確立です。低出生体重児・新生児への使用の安全性に関する十分な情報はありません。乳児・幼児・小児への使用例は少ないですが大きな安全上の問題は起こっていないようです。外国では約3g/日で活動性亢進、不眠、抑うつ、興奮、不安などの副作用が報告されています。

妊娠・授乳:動物ので実験ではピラセタムは胎盤関門を通過することと母乳に流入することが示されています。安全のため使用を控えましょう。

高齢者: 開始用量を少量にするなど、慎重に服用する必要があります。

相互作用

相互作用に関する情報はありません。

その他の名称

  • ミオカーム 、ピロリドンアセトアミド、2-オキソ-1-ピロリジン、メモトプリル、フェザム、シンナリジン、UCB6215

注意点

  • ピラセタムは水溶性で食品と一緒に摂取する必要はありません。
  • ほとんどの研究では、個人によって効果に大きなばらつきがみられます。
  • 非刺激性で非鎮静性と報告されています。

服用方法

推奨用量、有効量、その他の詳細

小児の標準的なピラセタムの投与量は、体重1キロ当たり40~100mgです。この用量は、泣き入りひきつけの治療を目的としていますが、失読症の子供に使用される例もあります。最もよく処方されるのは40~50mg/kgとなっています。成人のピラセタムの標準服用量は1日当たり1,200-4,800mgです。最大用量は1,600mgを1日3回、合計4,800mgとなります。

ピラセタムは、ほぼ100%腎臓から排泄されます。以下の基準を参考にして投与量を調節してください。また、ミオクローヌスの治療には抗てんかん剤などと併用して使用されています。

  • Ccr:60・40mL/分,血清クレアチニン:1.25・1.70mg/dL→通常量の1/2
  • Ccr:40・20mL/分,血清クレアチニン:1.7・3.0mg/dL→通常量の1/4
  • 腎Ccrが20mL/分以下には禁忌

科学的根拠・参考文献