イノシトールは立体構造の異なる分子の総称ですが、通常細胞のシグナル伝達に関与するグルコースに似た分子のミオイノシトールを指します。高用量では抗不安・抗パニック作用、標準用量ではインスリン抵抗性や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療に有効性を示しています。

概要

重要な効果・情報

イノシトールは、9つの立体異性体を持ち、これらの分子を総称する言葉です。「イノシトール」は多くの栄養補助食品に含まれていますが、異性体が指定されていない場合、通常ミオイノシトールのことを指します。イノシトールはビタミンBに分類されると誤解される場合がありますが、ビタミン様物質です。様々な食品中に見られますが、特に全粒粉や柑橘類の果実に豊富に含まれています。

イノシトールは、体内で特定の化学物質のバランスを取ることで、恐怖症、うつ病、強迫神経症などの精神的な症状を改善したり、インスリンの働きを助けたり、多嚢胞性卵巣症候群や妊娠中の糖尿病などの状態の改善に役立っていると考えられています。

ミオイノシトールは、嚢胞性卵巣症候群の女性の妊娠率の改善、抵抗性糖尿病のインスリン感受性の回復、不安やパニックの軽減、早産児の急性呼吸窮迫症候群に役立つことが示されており多くの栄養補助食品に含まれています。また、不安やパニックに対するほど大きな効果は示されていませんが、うつの改善や、恐怖症や過食のような不安に関連する症状に対しても効果が示唆されています。抗パニック作用が示されていますが、統合失調症や自閉症、PTSDに対する効果は見られませんでした。

また、部分的にPMSの症状(不快感や不安)を軽減する作用も示唆されていて、一般的な女性のサプリメントとしても有効な可能性があります。また、イノシトールの補給による抗うつ効果は女性のみで有効である可能性も示唆されています。

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イノシトールの摂取の安全性については比較的十分な科学的検査が行われていて、非常に安全とされています。ミオイノシトールに関連する副作用は、高用量の場合に軽度の胃腸の不調が出る可能性があります。

適応・効果

適応情報

有効性の信頼度(中)

  • 妊娠中の糖尿病(妊娠糖尿病): 妊娠中にミオイノシトールを葉酸と一緒に服用すると、発症リスクのある女性の妊娠中の糖尿病発症率が60%-92%低下するようです。 葉酸なしでイノシトールを低用量で服用しても有意な効果はないようです。
  • リチウムによる副作用: イノシトールを経口摂取すると、リチウムによる皮膚症状の乾癬を改善するようです。 しかし、リチウムを服用していない人の乾癬には効果がないようです。イノシトールは、リチウムによる乾癬以外の副作用の改善には効果がないようです。乾癬 乾癬
  • メタボリックシンドローム: アルファリポ酸の有無にかかわらずイノシトールを服用すると、メタボリックシンドロームを患う閉経後女性のインスリン抵抗性、コレステロール、トリグリセリドレベルおよび血圧が改善するようです。コレステロール抑制サプリ:血圧サプリ:コレステロール インスリン 血圧
  • パニック障害(パニック発作広場恐怖症): イノシトールは、パニック発作や広場恐怖症の恐怖をコントロールする作用を示しています。 ある研究は、イノシトールが処方薬と同じくらい有効であることを示唆していますが、パニック発作への有効性を実証するには、より大きな臨床研究が必要です。 パニック攻撃
  • 多のう胞性卵巣症候群(PCOS): イノシトール(D-キロイノシトールまたはミオイノシトール)を傾向服用すると、多嚢胞性卵巣症候群による肥満女性のトリグリセリド、テストステロンレベルを低下させ、血圧を適度に下げ、卵巣の機能を改善するようです。 ミオイノシトールは、処方薬のメトホルミンと同様に効果を持つ可能性があります。 いくつかの研究では、上記の二種類のイノシトールを一緒に服用することは、D-キロ – イノシトールを単独で服用する方が排卵が改善されることが示されています。 また、ミオイノシトールを単独で使用するよりも、血圧、血糖、および血中インスリンレベルが改善することが示されています。血圧サプリ:テストステロン インスリン 血圧 体重
  • うつ病(うつ状態): イノシトールの服用によるうつ病の症状の軽度の改善が示されています。ただし、初期の研究によると、イノシトールを4週間服用しているうつ状態の人の症状が一時的に改善するものの、その後悪化する可能性があることが示されているため注意が必要です。また、イノシトールがSSRIと呼ばれる抗うつ薬の効果を改善する可能性が示唆されていましたが、これまでの研究ではこのような作用は否定されています。うつ病
  • 急性呼吸窮迫症候群: 呼吸窮迫症候群の早産児にイノシトールを点滴すると呼吸が改善し、死亡の危険性、失明の原因となる症状を発症するリスク、脳内出血のリスクを低下させるようです。呼吸促迫:

効果がない可能性(中)

効果がない可能性(高)

エビデンス不足

  • 注意欠陥多動障害(ADHD): 初期の研究では、イノシトールはADHD症状の改善に効果がない可能性が示されています。
  • 双極性感情障害: 双極性障害を持つ子供に対する初期の研究では、特定のオメガ3脂肪酸を含むイノシトールを摂取すると、躁病および抑うつ症状が改善されることが示されています。脂肪サプリ:
  • 糖尿病(糖尿): 初期の研究では、葉酸とD-キロイノシトールを組み合わせて摂取することで、I型糖尿病で肥満の人の血糖が葉酸を単独で摂取するよりも低下することが示されています。血糖
  • 肺癌: 初期の研究ではイノシトールを服用しても、肺癌のリスクが高い人の前癌細胞の増殖に有意な影響を与えないことが示されています。
  • 強迫性障害: イノシトールを6週間経口服用すると、強迫性障害の症状が改善するというエビデンスがいくつかあります。 しかし、イノシトールは、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)で治療している患者の強迫性障害の症状の改善には影響を与えないようです。
  • 外傷後ストレス障害(心的外傷後ストレス障害・PTSD): 初期の研究では、PTSD患者がイノシトールを経口摂取しても苦痛の改善に影響を与えないことが示されています。ストレスサプリ:ストレス
  • 妊娠に伴う合併症: 妊娠中にイノシトール(異性体ミオイノシトール)と葉酸を経口摂取すると、出生時に体重が4kgを超える新生児の数を減らすようです。 しかし、この組み合わせは、妊娠中の高血圧、早産の危険性、帝王切開率、出生後の呼吸の問題を持つ危険性を低下させないようです。血圧サプリ: 高血圧症: 血圧
  • 抜毛癖: イノシトールの経口摂取は、抜毛癖の改善には効果がないようです。育毛サプリ:
  • :
  • 育毛: 育毛サプリ
  • 高コレステロール血症: コレステロール抑制サプリ:コレステロール
  • 脂質代謝異常: 脂肪サプリ:
  • 不眠症: 睡眠サプリ

 

効果まとめ

効果まとめ表

効果まとめ表は動物や試験管内の実験ではなく、経口服用による人体での反応を科学的に研究したデータを基にどのような効果がどの程度あるのかをまとめたものです。

 

レベル 研究の質と量

?

信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります.

二重盲検臨床試験が繰り返し行われ確実性の高い研究が実施されています。
2つ以上のプラセボ効果を排除した二重盲検試験を含む複数の研究が実施されています。
二重盲検試験が1件または複数コホート試験が実施されています。
上記に満たない研究内容または観察研究のみが報告されています。
研究の質と量

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信頼性の高い研究データの量. 信頼性の高いデータが多ければ多いほど研究結果の信頼性が高くなります.

研究対象 効果の大きさ

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それぞれの研究対象に対する効果の方向性と大きさ. 対象項目を増加させるもの、低下させるもの、作用しないものを示しています.

研究の整合性

?

科学的な研究でも常に結果が一致するとは限りません. この評価が高いほど対象項目に関する科学的な研究結果が一致しており、整合性が取れています.

摘要
多のう胞性卵巣症候群の治療 中程度 非常に高い 14件の研究結果を見る
イノシトールを毎日200-4000mgの範囲で補給することは、多のう胞性卵巣症候群(PCOS)の女性の妊娠率を改善するのに有効であることが示されており、2,000-4000mgの用量の服用はテストステロンレベルやインスリン感受性の改善に有効なことが示されています。
不安 中程度 非常に高い 4件の研究結果を見る
高用量のイノシトールの服用によって不安症状の減少が示されており、フルボキサミンに匹敵する効力を持つことが示されています。
不妊症 中程度 非常に高い 9件の研究結果を見る
多のう胞性卵巣症候群(PCOS)を有する女性がイノシトール(典型的には2000mgを1日1回または2回)を服用することで、排卵および妊娠率を有意に改善できることが示されています。
パニック発作 中程度 高い 3件の研究結果を見る
高用量のイノシトール(18g)を慢性的に摂取することで、パニック発作の頻度を比較薬のフルボキサミンよりも有意に減少させることが示されました。急性使用は有効ではないようです。
血糖値 小さい 中程度 9件の研究結果を見る
多のう胞性卵巣症候群(PCOS)の女性の場合に、PCOSの治療だけでなく血糖値も低下することが示されています。
血圧 小さい 非常に高い 6件の研究結果を見る
イノシトールでPCOSを治療している患者の血圧が軽度に低下することが示されています。
うつ病 小さい 非常に高い 8件の研究結果を見る
イノシトールの服用によるうつ症状の減少が見られるが、不安やパニック発作に対する効果ほどの効力は見られませんでした。また、改善したあと悪化したという報告もあるため、注意が必要です。
HDL-C 小さい 非常に高い 5件の研究結果を見る
イノシトールでPCOSを治療している女性の循環HDL-Cの増加が見られました。
インスリン 小さい 高い 7件の研究結果を見る
PCOSの症状の治療に加えて、空腹時のインスリン濃度の低下が示されています。
インスリン感受性 小さい 高い 12件の研究結果を見る
イノシトールでPCOSを治療している女性のインスリン感受性の改善が示されています。
トリグリセリド 小さい 非常に高い 4件の研究結果を見る
イノシトールでPCOSを治療している女性のトリグリセリドの軽度の減少が示されています。
体重 小さい 高い 7件の研究結果を見る
イノシトールでPCOSを治療している女性の体重の減少が見られました。肥満の女性よりも、痩せた女性や過体重の女性での効果が顕著なようです。
統合失調症の症状 非常に高い 3件の研究結果を見る
抗うつ効果を示した用量でのイノシトールの服用は統合失調症に関連する症状の改善は見られませんでした。
アディポネクチン 小さい 研究結果を見る
PCOSの女性のアディポネクチンの増加が見られました。
過食 小さい 研究結果を見る
高用量のイノシトール療法(毎日18g)により、過食症と診断された女性の過食症の症状が有意に改善されました。
一般酸化 小さい 研究結果を見る
イノシトールで治療しているときにPCOSに関連する酸化の減少があるかもしれない
妊娠糖尿病リスク 小さい 非常に高い 2件の研究結果を見る
妊娠中のイノシトールの補給が妊娠時の糖尿病を発症するリスクを半減させることが示唆されています。
インスリン分泌 小さい 非常に高い 3件の研究結果を見る
インスリン抵抗性を持つ被験者がイノシトールを経口服用すると、摂取されたグルコースに応答して分泌されるインスリンの量が低下することが示されています。
乾癬 小さい 研究結果を見る
毎日6gのイノシトールを服用すると、リチウムによる乾癬が減少することが示唆されています。
OCDの症状 小さい 研究結果を見る
高用量のイノシトール補給によって、強迫性障害の症状の改善が見られました。
PMSの症状 小さい 中程度 2件の研究結果を見る
ミオイノシトールの補給が月経前症候群(PMS)時の不快感や抑うつ症状の軽減に有効なことが示唆されていいます。
総コレステロール 小さい 非常に高い 4件の研究結果を見る
PCOSの女性の総コレステロールのわずかな減少が示されています。
記憶喪失 研究結果を見る
5日間予備充填された6gのミオイノシトールの経口投与は、電気痙攣療法による記憶喪失に影響を与えませんでした。
肝臓酵素 研究結果を見る
ヒトの毒性試験では、肝臓への悪影響は見られませんでした。
アルツハイマー病の症状 中程度 2件の研究結果を見る
予備的なエビデンスでは、シロイノシトール(scyllo-イノシトール)およびミオイノシトール(myo-イノシトール)の服用による有意な治療上の利益を見出せませんでした。
双極性感情障害の症状 非常に高い 2件の研究結果を見る
効果を持つ可能性を完全に排除することはできませんが、現在利用可能な最良のエビデンスは、双極性感情障害の治療においてイノシトールが重要な役割を果たさないことを示唆しています。
心的外傷後ストレス障害の症状 研究結果を見る
一般的なパニック障害および不安を顕著に改善しますが、PTSDについて行った研究では、イノシトール療法の有意な効果は見られませんでした。
にきび 中程度 研究結果を見る
PCOSの女性のニキビにのみ有効な可能性がありますが、通常の用量のミオイノシトールを3~6ヶ月服用した被験者の半数以上でにきびがなくなりました。
LDL-C 小さい 高い 3件の研究結果を見る
他の脂質パラメーターの改善に加えて、LDL-Cの減少が示されています。
プラスマロゲン 小さい 中程度 2件の研究結果を見る
ミオイノシトール経口摂取によって、コリンプラスマローゲンの増加が見られましたが、このような効果はメタボリックシンドロームの人のLDL-Cの減少した場合にしか起こらない可能性があります。
肺癌のリスク 小さい 研究結果を見る
二重盲検法によるさらなるエビデンスが必要ですが、18gのミオイノシトールの摂取によって、喫煙者の肺がんリスクの指標となる肺異形成の減少が見られました。
多毛症の症状 小さい 非常に高い 2件の研究結果を見る
PCOSや高アンドロゲン血症を持つの女性において、アンドロゲンを減少させ、髪の成長が減少することが示唆されました。
C-反応性タンパク質 研究結果を見る
メタボリックシンドローム患者のC反応性タンパク質濃度に有意な影響は見られませんでした。
自閉症の症状 研究結果を見る
自閉症に関する予備的エビデンスでは、イノシトール療法の効果は見られませんでした。

 

副作用

副作用と安全性

イノシトールの経口服用はほとんどの人にとって安全とされています。 高用量で服用した場合の副作用として、軽度の吐き気、胃痛、疲労、頭痛、めまいの原因となる場合があります。

注意と警告

子供: イノシトールは、5〜12歳の子供の短期間(最大12週間)の経口服用は安全とされています。 また、病院で急性呼吸窮迫症候群の未熟児に使用される場合も安全とされています。
妊娠と授乳: 妊娠中の経口服用は安全とされています。授乳中の安全性は十分には分かっていません。 安全のため使用を控えましょう。

双極性感情障害: 過剰なイノシトールを摂取すると双極性障害が悪化する可能性が懸念されています。 イノシトール、カフェイン、タウリン、および他の成分を含むエネルギードリンクを何本か4日間飲んだ後、極度の興奮と躁病の衝動で双極性障害の男性が病院に送られたという報告があります。これが成分(イノシトール、カフェイン、タウリン、それ以外の成分)、または成分の組み合わせが原因で起こったかどうかは分かっていません。

糖尿病: イノシトールは、血糖値とヘモグロビンA1c値を低下させる可能性があります。 低血糖の徴候や糖尿病を患っている場合は血糖値に注意してイノシトールを使用してください。

注意事項

相互作用

相互作用に関する情報はありません。

その他の名称

  • ミオイノシトール、シクロヘキサンヘキソール、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキソール

混同しやすいもの

  • D-ピニトール(構造的に類似)

注意点

  • ミオイノシトールを高用量で補給すると神経に作用する可能性があります。
  • サプリメントが「イノシトール」と表示され、立体異性体が特定されていない場合、殆どの場合ミオイノシトールを指します。

分類カテゴリー

良い組み合わせ

  • D-キロイノシトール(PCOSの治療におけるミオイノシトールの有効性を増強)
  • メラトニン (女性の受胎能の改善)
  • フィチン酸( 試験管内での実験においてフィチン酸の抗癌作用と相乗的に作用)
  • リチウム(中程度の用量のミオイノシトールは、リチウムの作用に影響することなく副作用を減少)

確認事項

服用方法

推奨用量、有効量、その他の詳細

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療には、ミオイノシトールを朝食の前に1日1回、200~4000mgの範囲で摂取されています。用量や補給頻度の増加で、効果が高まるようです。神経系を目的としたイノシトールの服用は高用量が必要となる傾向があり、抗うつ効果は6g以上とされていますが、標準的には1日14~18gです。粉末のミオイノシトールではなくジェルを使用する場合、標準的には重量の30%が実質的なミオイノシトールの含有量となっています。

下記の用量が科学的な研究で使用されました。

成人

経口服用:

  • 妊娠糖尿病: 異性体ミオ – イノシトール2gと葉酸 200mgを、妊娠の初期に1日2回服用しています。
  • リチウムによる乾癬: 1日6gのイノシトールを服用しています。
  • メタボリックシンドローム: 異性体ミオイノシトール2gを1日2回、1年間服用しています。
  • パニック障害: イノシトール12-18gを服用しています。
  • 多嚢胞性卵巣症候群: 異性体D-キロイノシトール1000〜1200mgが使用されています。 もしくは、異性体ミオイノシトール4グラムと葉酸400mgを含む製品を6ヶ月毎日服用しています。 もしくは、ミオ – イノシトール550mgとD-キロイノシトール13.8mgを含む製品を、6ヶ月1日2回服用しています。
  • 妊娠合併症: 異性体ミオ – イノシトール2gと葉酸200mgを、妊娠初期に1日2回服用しています。

子供

経口服用:

  • 早産児の呼吸窮迫症候群: 病院において、体重あたり120〜160mg/kg、または、2500mcmol / Lのイノシトールが使用されています。

点滴:

  • 早産児の呼吸窮迫症候群: 病院において体重あたり80-160 mg/kgのイノシトールが使用されています。

科学的根拠・参考文献